NAIST 情報科学区分 合格体験記(2023年度第1回入試2024年春入学)

2023年の7月に奈良先端科学技術大学院大学NAIST)の博士前期課程情報科学区分第1回入試を受験し,合格したのでその体験記です.

受験直前の筆者の背景

  • 京都大学
  • 専門は情報系でない
  • 学部のGPAは3程度(ただしNAISTに提出した成績証明書にはGPAの記載なし)
  • プログラミングはそこそこ,研究用のスクリプト程度はそんなに苦じゃなく書ける
  • TOEIC920点
  • センター試験で失敗し一度は情報系に行くのを諦めたが,結局情報系に行きたくなって院から専門を変えようと考えていた

NAIST受験に至るまで

3回生まで
  • 勉強はほとんど学部の専門科目の試験対策のみ
  • 学部は情報系ではないが情報系の専門科目も開講されていたため,情報系科目を多めにとっていた.
  • プログラミングについて,Cは学部の授業でポインタまでを,Pythonは授業の課題で用いた程度でした.

NAISTに限らず情報系の大学院に進学する意志があったため,京都大学大学院入試,大阪大学大学院入試にも使えるTOEICを試しにうけ,3回生夏時点で720点でした.

NAISTを考えている場合は700点あれば十分だと思いますが,NAIST以外の大学院を受けることを考慮し満足はしていませんでした.なおTOEICの2022年合格者平均は718点程度です.*1

サマーセミナー

NAISTサマーセミナー2022

NAIST情報科学領域ではサマーセミナーと呼ばれる,受験生を対象としたセミナーが開催されており,3回生の夏休みに参加しました.NAISTに初めて行ったのはこのときで,後に配属される研究室との出会いでもありました.

僕が参加したテーマでは研究に関連した技術に一通り触れていき,分野の概観を掴むことができました.また入試についても先生や院生に聞くことができました.ここで入試で提出する小論文を提出前に院生の添削を受けられることを知りました.

インターンシップ

isw3.naist.jp

情報科学領域にはインターンシップと呼ばれる制度もあり,3回生春休みに参加しました.こちらでは実際に研究室の生活を体験することができました.サマーセミナーと比べてこちらは研究室の雰囲気をより感じることができ,進学の意欲を高めることになりました.また小論文のテーマなどはインターンシップで行った研究活動を発展させたものとなったり,数学の過去問を院生に聞くなど入試にも直接役に立ちました.

4回生 4月から6月

NAISTの受験を決め,入試対策を本格的に始めました.

英語

第1回入試では遅くとも6月末までに成績表を提出する必要があり,5月中にはTOEIC成績表が入手できるよう4月にTOEICを受けました.abceed*2というスマホアプリに課金し,1ヶ月ほどの勉強で920点とることができました(800点こえればいいなという程度でやっていたのでこれは運がよかったです).

数学

指定された教科書があるのでそれをやりました.よく言われるマセマはNAIST入試には適してないと思います.ちなみに教科書の指定されている範囲は年によって違うことがある(2022年と2023年では違った)ので,受ける年の募集要項を参照してください.教科書をサラッと読んで,5割程度の理解の状態で教科書の問題で演習し,あやふやなところをもう一度読む,また問題を解くといったように繰り返して勉強しました.数学は正直ガチャだと感じているのでどの問題がでても対応できるようにしとくのがいいと思います.出る範囲を満遍なく把握し解答できるようにするために指定教科書を使うのがやはりベストだと思います.その点でマセマを使うのは避けた方がいいと個人的には思います(あくまでもNAIST入試対策に関してです).線形代数について,特に射影や最小二乗近似といった部分が指定教科書の独特の部分であり,またその部分は過去に出題されたこともあります.数学は30/200点しか配分がありませんが,面接の直前に口頭諮問がある都合上,精神的な余裕という意味でも十分対策する価値はあると思います.

 

ちなみに筆者は学部の授業で線形代数微積ともにぎりぎりで単位をとった程度の数学力です.

小論文

志望している研究室とコンタクトをとりつづけ書き上げました.5月17日から書き始め6月2日に大体を書き終え,そこから添削の内容を反映するなどして修正し6月7日に提出しました.Overleafを用いて作成しましたが,共有機能のおかげで添削されやすかったように思います.テーマについてはインターンシップでやった内容の延長を書きました.また,情報系特有ですがある程度は手元でプログラムを書いて研究することはできるので実際に研究し,それについても記載しました.

なお,募集要項*3には

「これまでの修学内容(卒業研究等)について」 「奈良先端大において取り組みたい研究分野・テーマについて」 ※必ず2つの課題について記述してください。それぞれの課題の記載分量については、出願者の裁量とします。ただし、両課題併せて2枚にまとめてください (1枚は不可。)。

と書いてあり,現役大学生以外も入試を受ける可能性があるということ,学部での卒業研究がまだ始まってない人がいること,卒業研究と書いてあることから,何を書いても許されると思い,これまでの修学内容をさらに大きく二つにわけ,学部の卒業研究のテーマを軽く書いたのと,NAISTインターンで行ったことと,その延長の手元で行った研究について書きました.NAISTで取り組みたいことについてはさらにその延長を書きました.独特な構成だと自覚していますが,アピールできることはアピールしたいと思いこうなりました.

成績開示がされしだい,開示される点数からこの構成でよかったか判断できると思います.

NAIST入試本番

具体的な試験日は人によって異なりますが,7月上旬でした.Webex上で案内され,受付,数学の口頭諮問,面接といった順で進みました.それぞれの間には10分程度(正確には覚えてない)の待機時間がありました.

数学の口頭諮問はスケッチブックに書いて説明しながら解く形式でした.問題は2題で

でした.正直数学ガチャは当たりだと思います.

10分程度の時間が与えられてましたが,余裕をもって完答し,試験管の方に「早いけど終わっちゃおうか」と言われ10分せずに終了しました.早く終わらせられたことから満点を確信し(早く終わらせた→もうこれ以上得点する余地がない→満点といった論理),作戦通り精神的な余裕を持つことができました.

面接は志望研究室の教授1名と他の研究室の先生2名に小論文の内容をもとに質問される形式でした.研究対象の簡単な説明を求められたり,なぜそれを研究するのか,学部の卒業研究でやるのはどういうことかといった質問で,とくに難しい質問はなかったです.ほとんどの質問は志望研究室の教授からされました.はっきり覚えている質問は「小論文中で提案している手法が一番なのはなぜか」という質問で,僕は提案している手法が一番いいとは書いておらず,またそうでもないと考えてたため,「他の手法としては...が挙げられ,提案手法と比較すると...だが,そもそも使い分けされるべきでありどれが一番というわけではない」と答えました.自分が志望している研究分野を十分に調べていることがアピールできれば勝ちだと思います.学部での卒業研究にも触れられましたが,1回だけでした.入試説明会で言われていたことですが,学部の研究が始まってない人も考慮してくださっているようです.実際,僕はテーマのみが決まっていて卒業研究の本格的な開始は秋以降だったので助かりました.

合格発表

入試当日から二週間ほどして合格発表がありました.また,発表日の翌日に寮の優先権と配属の内定に関するメールがそれぞれ届きました.

総括

振り返ってみるとサマーセミナー,インターンシップに参加したのが大きかったと思います.そもそも進学したら2年間は過ごすことになるので,本当に行きたいようなところか判断するためにも一度は研究室を見学するといいと思います.